アメリカ人は意外とよく働き、休みが少なく、会社や上司に歯向かう人は稀

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正直に言うと、海外に住んでみたいとは思っていたものの、「アメリカだけはないわ」と思っていたので、渡米前はアメリカのことをよく知らず、一般的なイメージしか持っていませんでした。

なんでも大きい、雑、エンタメ、食べ物多い、甘い、保険悲惨、安全じゃない、Tシャツ+ジーンズ、などなど。

知れば知るほど、英語が分かるようになればなるほど、けっこう思っていたのとは違うな〜というところがあります。今回は、そんな「思っていたのとは違ったな」のお休みと就労時間、会社との関係性についてです。

労働時間が長い・休みが少ない・思っていたよりよく働く!

日本にいて、日本で働いてると、断然、日本人の方が働いていると思ってしまいますが、アメリカに来てから、「いやー予想外にアメリカ人働きすぎ!そして会社に怯えてる!」と思うようになりました。

昔は、欧米に対して数週間〜1ヶ月超休みを取って優雅に旅行するイメージを持っていたのですが、どうもそれは欧州のことで、アメリカは入ってないんだな…とようやく分かってきました(リタイヤされた方を除く)。

そこで、思ってる以上に厳しい環境にあるアメリカ人の祝日、有給休暇や労働時間について経験したことや見聞きしたことを入れながら実際のデータを使いつつまとめてみました。

アメリカの祝日少なすぎ問題

ニュースなどで各国の労働時間比較が報道されると、意外に日本のランクが低い位置にいて、驚かれますが、これは祝日が多いおかげなのも少しあると思います。

日米の祝日の日数を比較してみると…

日本の祝日年間16日
アメリカの祝日年間12日(Federal Holidays)
2023年現在

おや?ほとんど同じ日数?と思いますよね?それでも、4日違うだけで、8時間x4日=32時間もここで差がつきます。

さらに!このFederal Holidaysは政府系や学校などが休みになりますが、そうでない企業の方が多いです。そんな感じなので、片方では祝日ムード、片方では普通の日、なんて状態が1年中続きます。例外は、サンクスギビングとクリスマスです。この2つだけは、サービス業もお休みモードになるので、国全体で「あー休みだな」を実感できます。

ここで、2023年のFederal Holidays(国)とCalifornia State Holidays(州)、それから日本の祝日の内容を比較してみました。

Federal HolidaysCalifornia State Holidays日本
1月New Year’s Day
Birthday of Martin Luther King, Jr. Day
Inauguration Day(4年ごと)
New Year’s Day
Martin Luther King Jr. Day
元日
成人の日
2月Washington’s BirthdayPresidents’ Day建国記念の日
天皇誕生日
3月César Chávez Day春分の日
4月昭和の日
5月Memorial DayMemorial Day憲法記念日
みどりの日
こどもの日
6月Juneteenth National Independence Day
7月Independence DayIndependence Day海の日
8月山の日
9月Labor DayLabor Day敬老の日
秋分の日
10月Columbus Dayスポーツの日
11月Veterans Day
Thanksgiving Day
Veterans Day
Thanksgiving Day
Day after Thanksgiving
文化の日
勤労感謝の日
12月Christmas DayChristmas Day
合計12日11日16日
Federal HolidaysCalifornia State Holidays日本の祝日はそれぞれのサイトで確認しました。そして、知らぬ間に日本で8月の祝日が増えていた!ビックリ!

曲者なのは、この祝日が普通の企業だと全部は休みにならない可能性が高いことです。政府系・学校などはだいたいこの通りにお休みになりますが、プライベート企業は、この祝日のうち6日(standard sixや6 paid holidaysと言われる)の休みが多いです。

その6日の祝日は、New Year’s Day、Memorial Day、Independence Day、Labor Day、Thanksgiving、Christmas Dayです。

jinco
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初めてのフルタイムジョブの時、祝日の少なさに愕然としたな…。たしか7日だったような。祝日がなさすぎて、休みが多かった日本に慣れてた私は、とても辛かったです。

つまり、日本とアメリカでは祝日の差が大きすぎるのです。16日 vs 6日!この祝日分だけでも、時間にして80時間もアメリカ人の方が年間の就労時間数が多くなります。

参照:EnjoyOrangeCounty.com, “Federal & California Holiday Calendar 2023/2024″
OnTheClock.com, “United States Business Holidays

ヨーロッパと比べると

日本との比較だと「日本は有給休暇がね…」と思われるかもしれないので、ヨーロッパとの比較も見てみると…。

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US時間2023年9月28日のスクショです。
jinco
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アメリカ少な!!!ドイツ羨ましい!!

とにかく休まない、というより休めない。思ったより休暇が少ないので、カリフォルニアあるあるだと頭痛や体調不良時に使える「病欠」(付与される日数は少ない)を上手く利用し、休暇以外にたまに休んでいたりします。本当に病気の人もいるし、単純なズル休みの人も。そして、ズル休みもあっけらかんと同僚同士で話す!事前に「今日は飲みに行くから明日は休む」と宣言してくる場合もあります。上司には言いません、当然ながら。

それから、フルタイムであっても、日本と違って有給休暇が年に1度ドンっと付与されるのではなく、毎日働いて、それが積み重なることによって付与されることが多い(勤務時間X ◯%みたいな感じ)です。そして、カリフォルニアでは有給休暇は必ず付与すべきと法律では決まっていないので、有給休暇があるかないかは働く企業次第だったりもします。

このあたりに私はアメリカの闇を感じていて、基本的に人を信頼していないから、まとめて付与しないんだと思っています。「働いた分しか休みはあげないぞ!」という、なんかちょっと奴隷制度の名残というか、戦時中っぽいというか、日本でいう昭和っぽいというか…もうそんな時代じゃなくない?と個人的には思いますが、ところどころアメリカのシステムには疑問を感じます。

そういうわけで、アメリカでも有給休暇は使えるものの、一般的には使える日数自体は思ったより少ないです。

参照: Our World in Data, “Shorter work days, but also more holidays and vacations

フルタイム=週40時間、パートタイム=週40時間未満

個人的には、これは大問題だと思っていますが、大企業でもパートタイムとして働かされる人が多すぎることです。そして、日本のイメージのパートタイムではなく、けっこうガッツリ働かされるのに、扱いがパートタイムです。

カリフォルニアでは、一般的にはフルタイムは週に40時間勤務することを言い、パートタイムは週に40時間未満のことを言います。つまり、パートタイムで、39.5時間働くことも問題なくて、さらにパートタイムだとフルタイムに比べ収入が足らないことが多いので、パートタイムの掛け持ちが発生し、週の労働時間はおそらく40時間を軽く超える人もたくさんいると思います。

また、シリコンバレーならではかもしれませんが、フルタイムでも、1日12時間労働や15時間労働は普通によく聞くお話しです。期間限定のことが多い部署もあるみたいですが、常にこういう状態の部署も中にはあるみたいです。普通の事務職的なお仕事では、こんな長時間労働はあまり聞かないので、テックカンパニー(主にエンジニアやそれに関連する企業・部署)限定のことかもしれません。

アメリカに来る前は、「定時できっかり帰って家族団欒を過ごし、週末休みで、たまに長期のバカンス行くんでしょ?」と思っていましたが、これができる人は本当に限られた職種だけだったんだな…と分かりました。

jinco
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私は、フルタイム勤務の時、途中で32時間に減らしてもらいましたが、32時間でもフルタイムとして扱ってもらえ、この辺りの対応力はいいなと思いました。(会社の規模によりこの時間でもフルタイム扱いが可能)

まるで弱い者いじめのパートタイム雇用

雇用形態が、私の短い在米年数の間でも、どんどんフルタイムからパートタイムへと切り替わっていっています。

こちらに来た当初から、「フルタイムになりたい!」と切望するパートタイムの方々には会ってきましたが、今は、「え!そんな仕事も!?」というような職種でもパートタイム、コントラクター、ベンダーなどという形で雇用し、あらゆる手を使って直雇用のフルタイムを削り続けています。

jinco
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アメリカ企業の経費削減LOVEはえげつないです。

パートタイムになると1番の不安が、健康保険です。このためにフルタイム雇用を目指していると言ってもいいくらいです。パートタイムでも健康保険がある企業もありますが、稀です。なぜなら、健康保険のオファーは連邦法では義務とされていないからです。そういうわけで、フルタイムだからといっても必ず健康保険がオファーされるとは限らないのですが、パートタイムよりは可能性が高いので、フルタイム雇用を目指します。

カリフォルニアは、超強力な左派で、一般人・大衆の味方なイメージが強く、右派だと「マジか!」くらいのリアクションを受けるのですが、労働の法律を知れば知るほど雇用主のパワーが断然強いという奴隷時代の性質をまだまだ引き継いでいて、なんとも不思議な感じになっています。例えば、フルタイムであってもベネフィットなし、というのもカリフォルニアでは可能です。週に40時間働いていたとしても、フルタイムと認めるか否かは雇用主次第で決めることも可能です。

一生懸命働いている人が報われない環境は好きではありません。一生懸命働いてる人が多いので、それが報われるようにして欲しいです。

jinco
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とは思うものの、この国はおそらくまだまだ変わらないだろうな、と思います。サクッと解雇するのも良い例ですが、企業が人を大事にしようとする気持ちがあまり見られない。そこが変わるのには、あと何十年かかることやら。

参照:California Business Lawyer & Corporate Lawyer, Inc., “What Is Considered Full-Time in California For Health Insurance?

アメリカ人働きすぎ問題ー複数の仕事に週70時間勤務

「アメリカのインフレやばい!」がよくニュースで流れていたのが去年あたりで、今年は随分と報道が減り、元に戻ったかのように装っていますが、クレジットカードの負債が過去最大の1T USD(1兆ドル)になり、CBSニュースによると、多くのアメリカ人がフルタイムの仕事を掛け持ちし、週に70時間も働いているそうです。

クレジットカード負債がどれくらいひどい状況なのかというと、私の世代、X世代(1965〜1980年生まれ)の負債が$7,336!!!

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YouTubeで見られるCBC Newsの“U.S. credit card debt has increased. Here’s why.”より

こんな状況なのもあり、とにかく働かないといけないという流れになっているみたいです。

Federal Reserve Economic Dataのデータをいくつか見てみると…

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US時間2023年9月28日のスクショです。Multiple Jobholders, Primary and Secondary Jobs Both Full Time

2つの仕事で、両方ともフルタイムの人が、なんと367,000人(2023年8月)。恐ろしい数字です。さらに恐ろしいのが、フルタイム+パートタイムの人数です。

US時間2023年9月28日のスクショです。Multiple Jobholders, Primary Job Full Time, Secondary Job Part Time

4,582,000人(2023年8月)です。どちらの人数も、データから漏れている人たちがおそらくいると思うので、実際はもっと多いんじゃないかと予想します。なぜなら、私のまわりでも掛け持ちはよく聞く話で、全く珍しいことではないからです。

と、こんな現状なので、アメリカ人がよく働く…というより働かざるをえない状況に陥っているため、結果として、私が想像していたよりも「アメリカ人は長時間働いてるな〜」という印象になっています。

参照:CBS NEWS, “More American workers are taking on second jobs as inflation rages

アメリカの会社でも上司や会社に歯向かうのは厳禁

もっと堂々とお休みを取るのが一般的なのかと思っていましたが、職場環境によるところが大きく、意外と小心な感じでお休みを申請したり、また上司からの「なんでこんなに長いんだ」とか「ここはカバーできないから減らせ」「連休の上限は2週間だ」みたいなちょっとした小言も一般的にあることが分かりました。実際の言い方は、もうちょっとまろやかですが、案外、日本と変わらない。

そして、一般的なアメリカ人の方が仕事の環境が過酷だと個人的には思います。というのも、仕事ができるできないに関わらず、上司に嫌われたり、目をつけられたりすると一気にクビや契約終了になる確率が高まるからです。その反面、好かれてさえいれば、仕事ができなくても昇進しているケースもあったりします。日本でも好き嫌いはありますが、仕事に問題がなければ、私情で解雇されることはないと思います。でも、それがあるのがコワイところです。そういうこともあって、歯向かわず、まじめに働きまくり、結局、働きすぎな傾向にあるのだと思います。

アメリカに引っ越してくる前は、アメリカ人はもうちょっと堂々と反論したり、上司であろうとも間違っていれば意見するものだと思っていました(ドラマとか映画もそんな感じだったし)。しかし、実際には日本人と同じような振る舞いをしている方が大多数です。そういう点では、上司に反論しようと思えばできる日本の方が環境はいいかもしれません。それもこれも、雇用主にパワーがありすぎるため、従業員は(基本的には)歯向かえない、歯向かわない歯向かってはいけない、という仕組みになっているからのようです。

アメリカ人も同じように苦労している、もしかしたら日本人以上の苦労かも

結局、日本にいた頃に青く見えた芝青いかのように教えられたは、全然青くなかった、ということです。

若い頃に有給休暇が取れないことを愚痴っていたある日、友達に「そういうのは最初が肝心。最初から休みを取る子だって印象をつけとけばいい」とアドバイスされ、その通りに実行しました。影では何か言われていたかもしれませんが、ほぼ希望通りにお休みも取れました。業務で変だなと思ったことは、「変じゃないですか?」って言ってきました。しかし、これは日本だったからできたことだったのです!法律で(アメリカよりは)雇用が守られているから。

jinco
jinco

アメリカでこんな風に自由気ままにしていたら、瞬時に解雇予定者入りです。

こちらに引っ越してから知ったアメリカ人は、私が勝手に思い描いていたアメリカ人像と違ったので、「日本人とそんなに変わらないな、むしろ日本以上に環境はヒドイところが多いな」と、思いました。上司にはゴマをすり、会社には逆らわず、長時間労働でも文句を言わず、全て言いなりの毎日。なんか、こんなに苦労しているアメリカ人がかわいそうです。

が、それでも(金銭的な)成功を夢見ている人が大多数なので、この習慣はまだまだ続くだろうし、精神的な犠牲を仕方ないと思っている人も多いと思います。

いつか、この悪い環境が改善することがあるのでしょうか?あって欲しいなと思います、理由はどうあれ本当に働き者だから。

そんなわけで、予想以上に働き者で従順なアメリカの社会人たちのお話でした。

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